祖母へ 30代 埼玉県 第1回 銀賞

あなたの宝物
村田 睦美 様 39歳

 粋で、おしゃれで、ユーモアたっぷり。明治生まれのおばあちゃんは、私の憧れでした。お互いに気が強くて口も悪い。しかも似た者同士の二人だから、よくケンカもしたよね。でも、子供の頃から、ずっとあなたが大好きでした。

 ある年のクリスマス。二人でケーキを食べていたとき、急に

 「来年は天国でクリスマスかな

なんて言い出した。いつもそんな事を言ってまわりを笑わせる人だから、私も

 「天国だったら、静かなクリスマスだね」

なんて返したよね。すると、今度は子供のようなふくれっ面をして

 「えー、やだやだ。静かじゃたいくつだよ。好きな物たくさん持っていこうっと」

と言い出して、二人で笑った。でも、その後

 「だけど、一番大切な宝物は持っていけないのよね」

と、真剣な顔でつぶやいた。

 「どうして? 持ってけばいいのに」

と言う私に、あなたは、私の手を握りしめながら、こう言ってくれたよね。

 「だって私の宝物は、あなただもの」

その言葉に、びっくりして

 「何を冗談言ってんのよ」

なんて、照れ笑いしてしまったけど、本当は、涙が出るほど、うれしかった。目の前で泣くと恥ずかしいから、家へ帰って思いきり泣いたんだよ。ほんとにうれしかった。

 次の年の夏の終わり、まるで夏の花が枯れるように旅立っていった。美しい最期だったよ。さみしくないといえば嘘になるけど、私は大丈夫。だって私の中で、おばあちゃんの存在が、変わらずに大きいままいてくれる。

 あのクリスマスの日、私を宝物だと言ってくれたあの言葉、そしてあなたが握ってくれた手のぬくもり。それが、私の一番の宝物です。

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