母へ 30代 埼玉県 第7回 銀賞

二冊の日記
伊藤 みか 様 33歳

 いま私の手元には二冊の育児日記があります。一冊は、三十年前にお母さんが綴(つづ)った娘、すなわち私の成長記録。もう一冊は、現在私が綴っている娘の成長記録です。昨年、娘が産まれて初めてのことばかりで何もかもが怖かったころ、お母さんが遺してくれた日記は、一番の教科書でした。丁寧に記された、当時抱えていた不安や悩み、そして少しずつ赤ちゃんとの生活に慣れていく様子に、どれだけ励まされたことでしょう。

最近一歳を過ぎた娘は、むくむくと自我が芽生えてきており、ますます毎日が面白くなってきました。私が同じ月歳頃の日記を読むと、今の娘と同じような日常のエピソードで溢れていて、やっぱり母娘だなぁと感じています。絵本が好きで、朝起きるとまずは本棚からお気に入りの本を引っ張り出してきて、眠い目をこすりながらページをめくっているところ。母親べったりの甘えん坊で、お母さんがトイレに行くだけでも、出てくるまでドアの前で大泣きするところ。それに、食べることが大好きで、お母さんが台所に立つとすぐに飛んできて、「まんま、まんま」と大騒ぎするところ。どれも今の娘の姿とそっくりで、思わず笑ってしまいます。今の私よりも若かったにもかかわらず、あんなにしっかり家のことや子育てをやっていたなんてすごいです。やりたい放題の娘に振り回されて、弱音を吐きそうになりますが、「私にもやれないことはない!」と当時のお母さんを見習い、毎日奮闘(ふんとう)しています。

私も母親になり、この日記を読むたびに、お母さんがどんな想いで私を育ててくれたのかが痛いほど伝わってきます。お母さんにこれほど愛されて育ったのだということが、私の自信になっています。私の娘がいつの日か子供をもったときにも、きっと同じように何かの助けになることがあるだろうと思い、私もせっせと育児日記をつけています。

お母さん、お母さんの想いはきちんと伝わっています。すばらしい宝物を遺してくれて、本当にありがとう。

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