祖母へ 20代 福島県 第7回 入賞

ビリじゃなかった
小川 美香子 様 22歳

 「だめだよみかちゃん、じいちゃんと走りな。ばあちゃんと走ったらビリになっちゃうから」

16年経っても、おばあちゃんのこの一言、私ははっきり覚えてるよ。幼稚園の祖父母参観日。おじいちゃんおばあちゃんのうちの一人と手をつないで走って、競う種目。おばあちゃんも覚えてる?

ある日突然、脳梗塞(のうこうそく)で倒れてしまったおばあちゃん。私は小さすぎて、当時はよく分かっていなかったけど、おばあちゃんは身体の半分が動かなくなってしまって、それはもう治らないかもしれないということだけはなんとなく理解した。すごく怖かったよ。おばあちゃん、もう歩けないの?って。

でもおばあちゃんは、ものすごい人だった。お医者さんも驚くほど頑張ってリハビリして、だんだん歩けるようになったんだもん!奇跡だって言われたよね。手すりをつかんで必死で、一歩一歩進むおばあちゃんの隣で、頑張れ頑張れって心で言ってたこと、まるで昨日のことみたい。おじいちゃんはね、私によくこう言ってくれた。「みかちゃんはなあ、小っちゃいのに飽きもしないで、ずうっとばあさんの隣にいてくれたんだよ」って。でもそれは、私が一緒にいたかっただけだよ。

そして祖父母参観。小走りができるほどになったおばあちゃんと、私は一緒に走りたいと言った。その時言われたのが最初の一言。でも私は、ゆずらなかった。絶対おばあちゃんと走る、と。

ビリから2番目。忘れないよ、あの時のおばあちゃんの笑顔。「ほら、ビリじゃなかった。おばあちゃん、ビリじゃなかったでしょ!」何回もそう言って、はしゃいだね。

そのすぐ後に事故で天国へ。それがなかったら、今頃ダッシュできてるかもよ?あの時元気をもらったのは、実は私。今更だけど、ありがとうって言いたくて。

あとしばらくしたら、そっちに行くから。そしたら、また一緒に走ろうね。あの時ビリじゃなかったから、今度は1位、目指そうよ。

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