祖母へ 20代 神奈川県 第13回 佳作

たらこのおにぎり
石瀬 木里 様 21歳

 ばあばが亡くなってから、一昨日でちょうど三年が経ちますね。

ばあばの話が出る度に、私は、たらこのおにぎりを買って家に来てくれた日を思い出すよ。覚えているかな? 私がまだ小学校一年生の頃、一人で家に留守番していると風で開く扉の音が怖くなり、泣きつくように、ばあばに電話した日のこと。

そしたら、足腰があまり良くなかったのに一時間かけて四階の家まで歩いてきてくれたね。手には、たらこのおにぎりが入ったスーパーの袋を持って。お腹を空かせてないか心配してくれたんだよね。あのたらこのおにぎり、とっても優しい味がしたよ。思い出すたびに溢れるほどの優しさが詰まった味。

二〇一七年の七月六日、お母さんから電話がかかってきて、ばあばが危ないと聞き、私は気が付いたらタクシーで病院に向かっていた。

病室につくと、ばあばの心臓はマラソンをずっと走っているような状態と聞いて、胸を締め付けられるような感覚だった。でも、ばあばの顔はなぜか健やかそうだったよ。他の家族も病院に駆けつけて、ばあばを囲みながら話をした。お姉ちゃんは新卒で、私も受験生、思えば家族そろっての久しぶりのまともな会話。看護師さんに容体が落ち着いたといわれて、私たちは病院を出て、夜も遅かったのでファミレスに行った。

お店を出たところで入ってきた、ばあばの知らせ。

最後まで芯のある優しい人だと思ったよ。病室にいる間も、食事中も、苦しいのに心配させないように待っていてくれたんだろうなって。本当にそういう人だったもんね。最後のばあばの手は骨の形が浮き出ていて、点滴の跡も痛々しく、握ってみても少し冷たかった。でも、心だけは最後まで温かかったんだろうなって思ってる。

思えば、いつも沢山の愛情と優しさをもらいっぱなしだったね。ごめんね。もっと会いに行けばよかった。ありがとうって言いたかった。

でも今の私にできるのは、ばあばからもらった、溢れるほどの優しさをみんなに伝えていくことだと思うの。だから、電車で席を譲るのも、ためらいはないよ。たらこおにぎりを買って来てくれたばあばだったら、そうすると思うから。

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