「一番お父さんを知らないユミ子が一番お父さんによく似ているなんて不思議だね」
そう言って、お母さんはよく私の顔を懐かしそうに見ていましたね。でも、最近、私はお母さんにそっくりになってきました。お母さんが天国へ旅立ってからもう十五年になりますが、鏡を見ればいつでもお母さんに会えます。お母さんのように、いつも笑顔でいたいと思っています。
お母さん、覚えていますか。子供の頃、三姉妹の末っ子だったので、私はお姉ちゃんたちのお下がりばっかり着ていました。お姉ちゃんたちは従姉のお下がりばっかり——お下がり三姉妹の願いは、
「さらっぴんを着たい!」
お母さんは年に一回、お正月に私たちの願いを叶えてくれました。服、靴、下着から靴下まで全て新品を買ってくれました。それはお父さんが生きていた時からの習慣でした。ぜーんぶ「さらっぴん」に包まれて、自分まで「さらっぴん」になったみたいでした。私たちは嬉しくて、嬉しくて、姿見の前で、入れ代わり立ち代わりファッションショー。お母さんもニコニコして、
「お父さんがいつもみんなに言っていた。『お母さんに買ってもらってよかったね。お母さんに感謝しなさい』って。お父さんが働いたお金で買ったのにね」
お父さんが交通事故で亡くなった時、お姉さんは六歳と四歳、私は二歳でした。お母さんは女手ひとつで私たちを育ててくれた。日々、お金に困る生活の中、三人娘に「全部さらっぴん」は大変だったでしょう。
むかし、むかしの忘れられない思い出です。お母さんは私たち三姉妹に我慢することと、感謝することの大切さを教えてくれました。十五年前、お母さんはお父さんの所へ逝ってしまったけれど、その教えは今も私の中で生きています。
お母さん、ありがとう。