何年経っただろうか。いつからか、母のいない生活が当たり前でそれがこの家族では普通なんだと思う。でもやっぱり、友達には母親が居る。家族が揃ってる。もう分かっているけれど、やっぱり心の何処かで母親の話をする友達が羨ましかった。私の中でお母さんの記憶は少なくて。
お母さんは10年前に私の前からいなくなった。覚えてるのは、病院の受付のすぐそばの病室で、お母さんが眠っていたこと。周りにいる何度か顔を見たことのある人たちは涙を流していた。まだ4歳の私には分からなかった。けれど、なんとなく空気で察したのか、大泣きしたのを覚えてる。他にもお母さんとの思い出は少なくて、お母さんと二人でカニクリームコロッケを食べた位。でも、私はお母さんが大好き。
10年経った今、中学2年になった私は、ときどきお母さんのことを考える。毎日考えていると、余計な事まで考えてしまいそうだから。
ついこの間、お父さんと話していた時の事。急にお母さんの話をするから驚いた私。今でも忘れられない言葉がある。
「れいかのママは36歳のまま年をとらなくなっちゃった」
今でも鮮明に覚えてる。空気が重くて、ちらっと見たお父さんの顔はお母さんの写真を寂しげに見つめてた。あぁ、やっぱり死んでしまったんだ。分かりきってることを改めて感じたし、お父さんが今でも愛してるのを知って嬉しかった自分が居る。ちょっと無愛想だけれど、お母さんのことが大好きなんだって分かる。
ねえ、お母さん。お母さんがお腹の中に宿してくれた小さな小さな命は、お母さんの手によって、愛によって大きくなったんだよ。今ではお母さんの身長もとっくのとんまに抜かして毎日頑張って生きてます。何度もお母さんが居ない悲しさや辛さを味わったけれど、お父さんやお兄ちゃん、友達に支えられて14年間生きてきたよ。
お母さんは私という存在を与えてくれた。生きるっていう素晴らしさを教えてくれた。もう……一緒に笑ったりすることはないけれどね、お母さんという存在は、今でも生きていて、私はお母さんを尊敬しているし、大好きです。
これからも悲しむことがあるかもしれない。でもこれだけは忘れない。お母さんが大好き! この先も、ずっと。