母へ 60代 茨城県 第14回 入賞

母ちゃんと一緒
益子 初美 様 67歳

 「今、何歳ですか」。スーパーで小さな子を見ると必ず、母ちゃんは話しかけていましたね。

 私が、仕事の合い間に、四人の子どもを連れて帰ると、待ってましたとばかりに、スーパーの特売で買っておいた品々を広げ始めました。砂糖やしょう油、油などの食料品の外、トイレットペーパーや、ラップなどの日用品、次々と出して持って行けと、半ば強制的でした。

 ですが私は、「かさ張るし、こっちでも買えるから、いらないよ」と、好意を全て無視し、素直な心は開けず、荒んだ性格は続きました。

 母ちゃん、私にも子ができ、孫も生まれると、心にも大きな変化が現れましたよ。

 赤ちゃんを見ると、孫の成長を比べて、「幾つになるんですか」と尋ね、その可愛いらしさに、心が和む日々を送っています。

 見ず知らずの人に話しかける姿が、馴れ馴れしくて、嫌だと思っていたその姿、私に完全に移っていました。

 娘たちが家に帰るとの連絡があると、物置きを物色し、特売で買い溜め込んだ食料品や日用品など、ある物全て見せ、必要な物は持って行けと、強制しています。娘たちは私と違って持って行ってくれるので、うれしい限りです。

 母ちゃんは、老若男女、年齢を問わず人が好き、話しすることを楽しみ喜び、それが生きがいでしたね。

 私が母ちゃんの性格、ちゃんと受け継ぎましたよ。

 私がこんなに変わるなんて、母ちゃんはびっくりするでしょうね。母ちゃんの子で良かったと、今になって思います。ありがとう。

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