母へ 60代 福岡県 第13回 銀賞

甘いウインナーカレーのおかわりを
石原 雅彦 様 61歳

 僕はお母さんの三十才半ばの子供。末っ子でいつも甘えてた。大好きでいつも引っ付いていたね。

でも、ある日から一緒にいるのが嫌になって避けるようになったのは気付いていたよね。反抗期かな? 参観日に友達から「お前のお母さん、お婆ちゃんみたいだな」って言われてからだった。着物姿はお母さんだけ。友達のお母さんは花柄のワンピース。それに友達は長男が多く、十才位年の差はあったかもね。仕方ないのは分かっていたんだけど若いお母さんの方が良かった。だってお婆ちゃんは早く死んでしまいそうで。

「もう学校に来ないで」と言い放ち走って帰ったね。なぜか涙が止まらなかった。とんでも無い事をしてしまったのではないかと。

その日の夕食はちゃんと覚えている。カレーライス、それもとっても甘いヤツ。肉嫌いな僕のために、肉に代えて大好きなウインナー入り。お母さんの顔を見る事ができず一杯でやめた。本当はおかわりしたかったんだ。お母さんは何も無かったように「もっとお食べ、もっともっと」と笑顔を投げかけてくれた。気にしなくて良いよと言う感じで。

それからもう参観日は来なかったね。先生から、「たまにはお母さんに来て下さい」と手紙を預かったけど帰る途中、川原に捨てたんだ。渡したらお母さん困るだろうなと思って。

本当は、元気な姿で手を挙げ答えるところを見て欲しかった。家で誉めて欲しかった。でも、やっぱり来てともう言えなかったんだ。

今、生きていたら、「何をいつまでも気にしてるんだい。全く覚えてないし、本当に忙しかったと思うよ。バカだねえ」と笑ってくれるかな。

お母さんが入院し、見舞いに行った時も僕の身体の心配をしてくれていたよね。痛いのも我慢して笑顔でね。いつも優しかったよ。

還暦も過ぎた今日でも、その一言をずっと気にしている僕がいるんだ。

ちゃんと謝っておけば良かった。今でも遅くないよね。許してくれるよね。

ゴメンね、お母さん。ただ、ただ恥ずかしかっただけなんだ。ゴメン。

寿美子さんが、僕の母親でいてくれて本当に良かった。ありがとう。

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