祖父へ 30代 兵庫県 第13回 入賞

大切にしている教え
安田 朋美 様 36歳

二十年前のあの日、私はおじいちゃんが入院していたホスピスにお見舞いに行き、病室でゆったりしていた。

びっくりするくらい穏やかな時間が流れていたね。高校生になったばかりの私はその穏やかさが落ち着かなくて、ベッドで静かにしているおじいちゃんの顔を覗き込んでみたの。寝ていると思っていたのに、私の顔を見て穏やかに目を細めたんだよね。それから眠るように逝ってしまったね。

おじいちゃんが穏やかに生を終えて二十年が経ち、大人になった私が感じる世界は今、少し混沌としていて。技術が発達して、S N Sなんてものが使える世界にもなったんだけど……。でも、本来生活を便利で楽しくするためのそれを使って他人を必要以上に中傷したりするようなことも起きていたりする。それに関連して、目眩(めまい)がするような悲しいニュースが入ってくることもある。

そんな時いつも思い出すのが、おじいちゃんが教えてくれたこと。

「言葉は使い方を間違えると人を傷つけ、追い込むことができる。だから、他人に向ける言葉には十分気をつけなさい」

どんな文脈で言われたのか忘れてしまったけど、私はずっと心に持って、戒(いまし)めにしています。とっても大切なことを、子供の頃に教えてくれて本当にありがとう。今でも大好きで、尊敬しているおじいちゃんの教えを胸に、私は、他人に不満の矛先を向けるのではなく、愛のある思考と言葉を選ぶ人生を歩んでいきたい。

それから、おじいちゃんが最後までいっぱい与えてくれた穏やかな愛情。今度は私が周りに与えることができる自分でありたい。

この命を終えるまで、自由を履き違えず、自分らしく、日常の愛ある側面に目を向けて笑顔で幸せに生きていくから、見守っていてくれると嬉しいな。

いつか空の上で、胸張ってとびきりの笑顔で会えますように。

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