祖父へ 10代以下 静岡県 第11回 佳作

名前も知らない貴方へ
杉山 綾菜 様 17歳

 おじいちゃんへ

一度も会った事の無い孫から手紙をもらうなんて、さぞや驚いたことでしょう。孫の綾菜です。

今年で高校三年生になります。おじいちゃん、わたしはあなたのことを全然知りません。知っているのはあなたの顔だけ。おばあちゃんの家の壁にかけられた、色褪せたたった一枚の写真のあなただけです。あなたがどんな声で話すのか、何が好きで、何が嫌いか、どんな性格なのか。それから、どんなふうに笑うのか。写真に写るすまし顔のあなたからはとても想像できません。……私はあなたの名前も知らないんですよ、驚きました?母さんにもおばあちゃんにも聞いたことがないんです。母さんが高校生の時に亡くなってしまったあなたのこと、きっと二度と聞くことは無いでしょう。二人を悲しませたくないから。

そんなおじいちゃんの名前も知らないような薄情な孫は、あなたに伝えたいことがあってこうして手紙を書きました。母さんを大切に育ててくれて、本当にありがとうございました。私がこうして母さんのもとに生まれ、一緒に居れるのはあなたのおかげです。

実は、今母さんは難病を患っています。治せない病気なのだそうです。それでも、毎日笑顔で私を愛してくれます。病気の影響で骨が折れてしまったり、毎日注射を打ったりもしていました。私たち家族のために病魔と日々戦っています。少しでも母さんの力になれるよう、皆も一緒に頑張っています。今は母さんに喜んでもらいたくて、皆で母さんの誕生日に向けてサプライズパーティーを計画しているところです。おじいちゃんもうまくいくことを願っていてください。

母さんは辛くて苦しいことがたくさんあるけれど、それでも毎日楽しそうに生きています。だから、安心して天国から見守っていてください。そして、いつか母さんがあなたに会いに行ったら、笑顔で迎えてあげて、たくさん話を聞いてあげてください。私、母さんに「幸せだった」って言ってもらいたいから。必ず母さんを幸せでいっぱいにするから。どうか、ゆっくり待っていてください。あなたの娘が、世界で一番幸せな笑顔をあなたに見せる時まで。たくさんの思い出をあなたと分かち合うその時まで。天国でゆっくり、待っていて。

あなたの孫より

関連作品

  1. 天国町二丁目五番宛。

  2. 亡き友へ

  3. 母ちゃん、ありがとう

  4. お父さん又ぶら下がって歩いていい?

  5. 愛された記憶

  6. 戒名の意味

PAGE TOP