父へ 30代 宮城県 第4回 佳作

天国町二丁目五番宛。
石塚 小夏 様 31歳

 お父さん、今何をしているの? どこにいるの? 会いたいよ。

「チャーハン作ったから食べにおいで」のメールに気づかなくて食べなかった手料理。三月十一日の地震で皿もテーブルもひっくり返っていたの。もう固くなってたの。また作ってよ。

お父さん。お父さん。津波は苦しかった? 寒かった? お父さんは最期に何を想ったんだろうって考えるよ。仕事かもね。みんなを早く帰らせて、会社に最後まで一人で残ったくらいだもんね。私達家族の為に働いてくれたお父さん、ありがとう。

お父さん、心残りってあるの? もし気になることあるなら教えてね。私、引き受けるよ。親孝行まだだしね。ただし、お金のことならお断りよ。それは自分で何とかしてね。ごめんね。

お父さんにいっぱい聞きたい事あるんだよ。お父さんは戒名がほしい? 今、私の家に一緒だけど、早くお墓に入りたい? お葬式は? 今、何を考えてる? いっぱいいっぱい聞きたいよ。私が娘で良かった? お父さん幸せだった?

私はお父さんの娘で良かった。胸はって言える。大好きなお父さん。娘の私が言うのもおかしいかもしれないけど、あんないい人いないなって思うよ。いい人すぎて、みんなを守って津波にさらわれちゃったんだもんね。時にはずるがしこくなってもいいかもね。

あっちではお酒飲みすぎちゃだめよ。ほどほどにだよ!! 私もいつかお父さんのいる天国町二丁目五番にひょっこり行くからね。それまでゆっくり歩こうね、お父さん。

 

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