母へ 50代 宮城県 第14回 入賞

お母さんの鼻歌
宗政 由美子 様 58歳

 お母さん、最近自分の事で気がついたことがあります。それは自分の仕草や口癖がお母さんに似てきたという事です。それに、お母さんが私にしてくれたのとすっかり同じことを息子にやっていることに気がつく時があります。不思議ですね。

 あと、私は最近家事をしながら鼻歌を歌うことがあるのですが、お母さんもそうでしたよね。私が鼻歌を歌う時は楽しいのではなく、ちょっと困ったことがあった時や悲しい時なんです。鼻歌を歌って気を紛らわせたり、自分を励ましたりしています。お母さんもよく掃除をしながら鼻歌を歌っていましたね。あの時、私はなんて楽しそうに家事をやっているんだと思っていました。「何かいいことあったの」と聞くと、「全然」と言って笑っていましたよね。もしかしたら、お母さん、あれは辛い時だったのですか。

 お母さんは決して家族に愚痴や文句を言わない人でしたよね。怒ったのを見たことがないし、いつも穏やかでしたよね。でも、今思うと家族もいろいろ大変な時がそれぞれあったし、元々心配性なところがあったお母さんですから悩みは多かったと思うのです。今、自分がお母さんのように鼻歌を歌うようになって、お母さんの当時の気持ちがわかるような気がします。あの鼻歌は悲しさや辛さの裏返しだったのだと確信さえします。娘としてもう少し察して話し相手になれていればよかったですね。もし本当に辛かったのなら力になれなくてごめんなさいね。

 いろいろなことがお母さんが亡くなってからわかるなんて、本当に「孝行したい時に親はなし」ですね。お母さん、またそちらで会える日がきたら今度こそゆっくり話を聞きますね。

 では、その日まで。

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