祖母へ 祖父へ 50代 宮城県 第8回 入賞

最後のことば
感王寺 美智子 様 55歳

 おじいちゃん、おばあちゃん、天国で、仲良く暮らしていますか?

あのね、おじいちゃん、おじいちゃんが亡くなった後、おばあちゃんは、こんなふうに話していたんですよ。「おじいさんね『まだ死にたくない、やり残したことがある』そう言ったの。だから『やり残したことは、なんですか?』って聞いたの。そうしたらね、“勉強”って言ったのよ。それが、おじいさんの最後のことば」。

私は、勉強好きなおじいちゃんらしい最後のことばだな、と思いました。そして、おじいちゃんが亡くなって間もなく、おばあちゃんも、おじいちゃんの後を追いかけるように逝ってしまいましたね。おばあちゃんが亡くなった時は、陽気でお茶目なおばあちゃんらしいお別れでした。前夜、みんなが集まった病室で「そろそろ、おじいさんの処へ行かなきゃいけないみたいです。皆さん、乾杯しましょう」。そう言って、みんなに御茶碗を持たせ「皆さん、ありがとうございました、かんぱーい」と乾杯しましたね。最後まで、笑顔のおばあちゃんでした。

そして、おばあちゃんが亡くなった後、私は母から聞いたのです。おじいちゃんの最後のことばは『勉強』じゃなかったということを。

「おじいちゃんが『勉強』と言ったその後、おじいちゃんは『綾子さん』と、おばあちゃんの名前を呼んだの。おばあちゃんが『はい、なんですか』と答えると、穏やかな声で『綾子さん、きれいですよ』そう言ったの。それが本当の最後のことば。おばあちゃんは、乙女の様に、頬を真っ赤にしていたわ」と。

お母さんは、ラブラブのおふたりを邪魔したくなくて、聞こえないふりをしたそうです。おばあちゃん、照れくさくて、嘘をついたのですか? いえ、きっと、そのことばを、自分の心の宝石箱に、そっとしまっておきたかったのですね。

ね、おばあちゃん。

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