祖父へ 30代 宮城県 第15回 入賞

たいした人になる。
鈴木 美穂 様 30歳

じいちゃん、最期に何を思い、何を考え、何を望みましたか。

 最後に会ったのは、二〇一一年三月一日。高校の卒業式の後、卒業証書を見せに行った日のこと。「たいしたもんだあ」卒業証書を手に車から降りる私を見て、一言。口数の少ないシャイなじいちゃんは、私を含め四人の孫を、ちょっと離れた場所から温かい愛情たっぷりな眼差しでいつも見守ってくれました。

 褒める時はいつでも「たいしたもんだあ」と、たった一言。

 どんなに頑張っても、何かすごいことをしても、それ以上の言葉を掛けてもらったことはありません。ですが、この日は違いました。

 私の卒業祝いで、みんなで食事をした時のこと。じいちゃんは、普段は控えているお酒をたくさん飲んで、私に質問攻め。私は大学卒業後の夢を話しました。

 すると、じいちゃんは、この上なく幸せそうな表情を見せ「たいしたもんだあ。たいしたもんだあ」「目指すだけですごい。自慢の孫だ。じいちゃんも長生きする。お酒も控える。毎日運動して健康でいる! そして、みんなが二十歳を過ぎたらお酒飲もう!!」と、じいちゃんの話は止まりませんでした。なんだか、こんなにお話をするじいちゃんは珍しい。いや、初めて見たかもしれない。その時は、テンションの高さに、ちょっと引き気味だった私。それは、まさか最後の会話になるだなんて、思っても見なかったからです。

 十日後の三月十一日。忘れもしない大震災に見舞われました。

 じいちゃんは、帰らぬ人となりました。

 どこで、どうやって亡くなったかは分からない。人を助けるために、引き返して亡くなったことは分かっています。

 だからこそ、聞きたい。

 最期に何を想い、何を考え、何を望みましたか。

 もし、一瞬でも私のことを思い、考え、望んでいたなら、今報告させてください。

 私は大学を卒業して、夢を叶えました。何度も何度も試験に挑み、合格を手に入れました。挫けそうな時も、じいちゃんが望んでいたことだと信じ、諦めませんでした。また、「たいしたもんだあ」と言ってほしくて、頑張りました。褒めてください。いつでも見守ってくれることを信じて、これからも前に進みます。じいちゃんが認める、たいした人になりたいです。

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