お父さん、やっと見つけました。お父さんと繋がれる郵便屋さんを。今だからこそ伝えたいこと、今じゃなきゃ伝えられないことを伝えたくて、初めて手紙を書きます。
お父さん、元気ですか? 今どこで何をしていますか? 行きたいと願っていた暖かい日差しが待つハワイで大好きなゴルフしましたか? おじいちゃんとは会えましたか? それとも、家でいつも座っていたテレビがよく見れる特等席に座って私達を見ていてくれていますか?
お父さんが第2の人生をスタートしてもう10年になります。時が過ぎるのは本当に早いです。この10年色々なことがありました。でもいつもあるのは笑顔と笑いでした。
お母さんは変わらずパワフルです。でもたまには顔を見せてあげて。きっとお母さん、お父さんに会いたくてたまらないから。
お兄ちゃんは結婚しました。可愛い奥さんと可愛い子供、家庭を持ちました。お父さんもおじいちゃんです。きっと可愛がったんだろうな。
そしてチビだった私も24歳になりました。あの時まだ子供だった私は、お父さんの病気は絶対に治ると信じていました。だからあまり病院にも行かなかった。ごめんね。今も、あの時もっとお父さんとの時間を過ごしていれば良かった、と思う。でもお父さんに何も出来なかった想いがあったから、看護師になりたいと思ったんだ。自分の娘がそんな人生の選択をしたこと、どう思いましたか? お父さんの声で聞きたいです。
ふと自分の手を見た時、忘れられないことがあります。お父さんが亡くなる2日前。危篤との知らせに泣きながら病室で握った温かい手のぬくもり。今を確かに生きている、と感じたあの瞬間を。そして、冷たく硬くなった頬のぬくもりを。絶対に忘れない。
お父さん。伝えたくてでも伝えられなかったことがあります。少し照れくさいけど聞いてください。私はお父さんとお母さんの子供に生まれて幸せです。自慢の両親です。もし、もしこの世に生まれ変わりがあるのなら、私はもう一度お父さんの子供として生まれたい。今度はもっと一緒に居たい。お父さんとバージンロードを歩きたい。そんな願いをこの手紙に託します。お父さん、ありがとう。これからもよろしくね。