父へ 70代 山口県 第1回 入賞

間に合わない意地っぱり
山口 みあき 様 45歳

 高校を卒業と同時に家をとび出して、離れた街へと住みついた私。父さんが嫌いだった訳ではなくって、父さんが再婚したあの人が嫌いだった訳でもなくて、ただ早く亡くなった母さんが可哀そうでたまらなかっただけ。私は小学生の頃からそうだったように、ずっと父さんと二人で暮らしていくのだと思いこんでいたみたいで。まさか母さん以外の人が家に来て三人で暮らすようになるなんて思いもしなかったから。仕事帰りに買い物をして食事の仕度をする父さんを当然と思っていた私がいけなかったのかもしれない。弁解する訳ではないけれど、あたりまえの生活だと思っていた。でも大人にならないと理解できないことがあるんだという事もわかる齢になってしまった私がいる。許してもらわないといけないのは私のほうだと気付いてからも、何年も連絡さえ取らなかった。結婚するときにだって一枚のハガキですませてしまった私。意地をはってるとは思っていなかったから。

 初めて届いたあの人からの手紙には優しい文字が並んでいた。父さんが逢いたがっているって。もうあんまり待てる時間が無いって書いてあった。18年もの長い月日を私のわがままのせいで空白にしてしまった。父さんの人生があるって事をちっとも理解しようとしなかった愚かな私。本当は何度も行こうと考えた。父さんの腕の中で泣いて詫びたいとずっと思っていた。とりかえしのつかない時間をうめるにはもう遅すぎるのかもしれない。知らせる事なく産んだ娘二人の手を取って新幹線に飛び乗って、焦るのならもっと以前に焦ればよかったと自分を責め続けて病院へと向かった私。遅かった私に、まだ少しだけ温もりの残る父さんの頬が泣いている様に見えた。「ごめんね。本当にごめんなさい」抱きつく私の背中を覆うような温もりを感じた。父さんの腕だった。親不孝な私を許して下さい。私の娘達を抱きしめて泣いているあの人が後ろに居た。呼んでみるね。「お母さん」って

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