母へ 20代 北海道 第4回 佳作

天国で会えたなら
藤原 正美 様 27歳

 「ママが死んでも、2人の心の中にずっと住んでいるから、会いたい時は、いつでも会えるのよ」……あなたは突然、私と妹に言いました。今考えれば、虫の知らせだったのでしょうか。私と妹にとっては、何の事やら、遠い未来の例え話の様で……。だって、あなたは元気だったし、いつも一緒にいるのが当たり前の存在だったから。だけど、あなたの表情が、あまりに真剣だったから、心に強く残ったあの言葉は、あなたがいなくなった今、私達の宝物になりました。

あなたが天国へ行ってしまってから、もう14年も経つのですね。あの頃、泣き虫だった妹も、もう立派な社会人です。私は27才。結婚し、1才の娘もいるんですよ。あなたに似て、まつ毛の長い女の子です。自分が母親になった今、思う事があります。まだ幼い私達を残していかなければならなかったあなたは、どんなに心残りだったかと。天国から、毎日あなたを思い出し、涙する私の姿を見て、自分を責めたよね。きっと、何度も「ごめんね」って謝ったでしょう。ママ、私はもう大丈夫だよ。あなたにできる、唯一の親孝行を見つけたから。私はあなたの分も長生きして、あなたが生きたくても、生きられなかった人生を、大切に生きていきます。心の中に生き続ける、あなたの思い出を抱きしめて。そしていつか、私がよぼよぼのお婆ちゃんになって、天国へ行く時には、あの優しい笑顔で抱きしめてくれますか? あなたの腕の中で私は、あの頃の中学生に戻って、あなたに伝えるの。「ママ、私を産んでくれてありがとう。あなたと過ごした人生は、とても幸せだったよ」って。涙もろいあなたは、きっと泣いちゃうんだろうな。

ねえ、生まれ変わっても、またあなたの子どもに生まれるからね。そしたら、次は長生きしてね。一緒に買い物して、温泉にも行こうね。結婚式には、私の手紙に涙して、可愛い孫も抱いてね。私が絶対、あなたを世界一幸せなお婆ちゃんにしてあげるからね。約束だよ。ママ。

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