祖父へ 20代 大阪府 第4回 入賞 広告掲載

私のおじいちゃんへ
山本 剛史 様 24歳

 私は祖父に手紙を送りたい。子供のころ田舎に帰省すると、いつも祖父にべったりだった。作業場で祖父がかばんなどを制作するのを飽きずにずっと眺めていた。

小学校6年生の時、いつもかばんをもらっているお礼にと、修学旅行のお土産をプレゼントした。祖父は私の予想以上に喜んでくれ、涙を流すほどであった。祖父が「なんでくれるんや」と問いかけたのに対し、「だっておじいちゃんのこと大好きなんだもん」私がそう答えた瞬間、祖父はさらに涙を流した。あの時はあの涙の意味を理解することはできなかった。

2年後、祖父がガンを患い、帰らぬ人となった。電話で祖父の死を伝えられた時は、はじめての身近な人の死に耐え切れず、わんわん泣いた。病床に私のお土産をおいていつも眺めていたと祖母から聞いて、気持ちが張り裂けそうだった。法事の際、祖父と多くの時間を過ごした作業場に行った。いつもの場所にはいつもいた祖父はもういなかった。

そして大学4年の時、祖父の七回忌を迎え、親族で集まることになった。その後の会食で、父や叔父たちが祖父の話をしているのを聞いているうちに違和感が生じた。さらに親の話に耳を傾けてその違和感の正体を知った。

祖父は私とは血が繋がっていなかった。どうやら、祖父は祖母の再婚相手だったらしく、私の父の実の父親ではなかったのだ。そのことを知って、祖父の涙の意味に今更ながら気づいた。祖父は血が繋がっていない、いわば他人であることを知らず寄り添ってくる私をうれしく思いながら、不安だったのではないかと思う。

もし、今私が亡くなった祖父に手紙を送れるとしたら、現在、社会に一歩踏み出すまでに成長した私のことを伝えるとともに、この一文を加えたい。

「たとえ血が繋がってなくても、おじいちゃんは私のおじいちゃんだよ」

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