母へ 40代 埼玉県 第14回 入賞

誉め上手なお母さん
齋藤 純子 様 40歳

 「純子ちゃんは、ほんとに本を読むのがうまいねぇ。先生も誉めてたもんねぇ」

 小学校一年生の時、お母さんは本読みを誉めてくれたよね。私と同じ名前の担任の純子先生も私の本読みを、お母さんの前で誉めてくれたから、お母さんも嬉しそうだったよね。

 幼稚園の時、お気に入りのたぬきのベストのファスナーがうまく出来なくて、先生に「ベストを着せてこないで下さい」と言われたよね。でも、その日にお母さんが一生懸命ファスナーの閉め方を教えてくれて、次の日先生の前でたぬきのベストのファスナーをうまく閉めてみせたんだよね。先生が驚いて、「純子ちゃん、本当はファスナーうまく出来たんでしょ」とお母さんに話したんだよね。お母さん、何回もこの話を私にしてくれたから、お母さんもこの話が自慢だったんだよね。

 お母さんは小さい頃から私の事をいろいろ誉めてくれたよね。私もお返しに、お母さんの事誉めてあげなくちゃならないね。お母さんが作る料理、おいしかったなぁ。グラタン、ワンタンスープ。いろいろあるけれど、ひき肉たっぷりのミートソーススパゲッティ!あのお母さんの作るミートソーススパゲッティまた食べてみたいなぁ。

 この間、お母さんの三回忌、無事に終わったよ。その日、めったに人を誉めないお父さんがお母さんの事を誉めていたよ。「お姉ちゃんが亡くなってから、お母さんよく耐えて頑張っていたと思うよ」って。お母さんが天国に行く五年前にお母さんの娘である私のお姉ちゃんも病気で天国に行っちゃったんだもんね。私、本当はお母さんが一人で泣いていたの知ってるんだ。明るいけど、寂しがり屋の所もあったお母さん。お姉ちゃんもおばあちゃんも天国で一緒だから、寂しくないよね。

 お母さんが本読みを誉めてくれたから、本も文を書くのも好きになって、今こうしてお母さんに手紙を書いているよ。私もお母さんみたいに、誉め上手になろうと思うんだ。

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