私はずーっと、お母さんの実の娘だと思っていましたよ。結婚して二人目の息子が生まれた後に、旧い知人から真実を聞きました。従姉(いとこ)や近所の人達に聞いてみると、皆はとうの昔から知ってたんですね。でも私に黙っていてくれたのは、やさしさなのね。多感な十代じゃなくて良かった……。
夫に話したら「今まで育ててくれた人が、本当の親じゃないか」と一言。お母さんには直接聞けなかったけど、私がすでにそれを知ったこと、従姉達に聞いていたんですよね。「余計なこと言ってくれた。娘が不憫(ふびん)だ」と泣いてたそうですね。でもその後はお互いに知らん顔で、今までと変わらない日々を送っていましたね。同居して半年後、亡くなる前に二人きりになった時初めて、お母さんは話してくれましたね。助産婦所で、男の子の入った産湯の後、取り替えずそのまま入れられた私を見て、新しいお湯に入れてあげようと、事情があって育てられない実母の手から生後五日目にもらって来たと、打ち明けてくれました。お母さんが亡くなって数十年過ぎた”母の日“に何一つ親孝行できなかったなーと夫に言うと「孫二人見せてあげたことが何よりの親孝行だったと僕は思うよ」それを聞いてなんだかホッとしました。私達にも二人の孫が出来、嬉しくて幸せを沢山もらえ、充分に親孝行してもらいましたから。
昨年桜満開の日、夫は逝きました。今頃あの世で「パパ、来るの早すぎだよ」とお母さんは声をかけているのでしょうね。
お母さん、愛情深く育ててくれて、本当にありがとう。そして今でも、私を見守ってくれてありがとう。
お父さんと仲良くしていますか。私もそのうち、お母さん達の所へ行きます。待っていてね。