母へ 40代 福岡県 第2回 佳作

母ちゃん、ありがとう
小松 勇二 様 41歳

 昨日まで、あんなに楽しそうに話していたのに、眠ったまま逝ってしまった母ちゃん。伝えたい事も、してあげたい事も、たくさんあったのに……。俺にとって、あなたは、この世で、たった一人の母ちゃんです。我が子以上の愛情で、いつも俺を包み、育ててくれたこと、本当にありがとうございました。

 一番幼い自分の中にある記憶は、煮えたぎった鍋を、足にこぼした時のこと。必死な形相をした母ちゃんが、病院へ、運んでくれた。足は痛いのに、母ちゃんにギュッと抱かれた俺は、なぜだか安心感でいっぱいだった。

 母ちゃんが、俺の母親だと信じて疑ったことなど、なかった。だけど、学生時代、真実を告げられた時は、やっぱりショックで、生活も荒れたね。本当ごめんよ。高校も、退学寸前のところで、校長に「息子の将来をつぶすつもりか!!」とケンカもふっかけたし、土下座もしてくれた。「高校だけは、でとかな……」と。今では、その高校時代の友達が、心の友です。

 今、この不況化で、俺の会社も店を閉じ、実質、失業となりました。家族をかかえ、ついた保険業も、一日店をまわり、知り合いを渡り歩き、足が棒のようになっても、なかなか契約がとれない毎日。今、家族を守る母ちゃんと同じ立場になって初めて、どんなに母ちゃんが、大変な思いをして、女一人で3人を育て上げたかが、改めて身にしみます。店を切り盛りし、野菜の入った段ボールも、軽々と持ち上げていた太い腕。その腕で、俺たちを守ってくれたように、俺も自分の家族を守りぬきます。見てて下さい。いつか、俺が母ちゃんと会った時、誉めてもらえるように。母ちゃんが、育てた息子を、自慢できるように。

 けど、愚痴や泣き言を言いたい時、疲れ切った時、弱った時、母ちゃんに無性に会いたくなります。話したくなります。

 会いたい。母ちゃん、会いたいです。

 そして、言いたい。

 ありがとう。

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