夫へ 50代 愛知県 第10回 入賞

いつかまた会える日まで
武藤 仁美 様 56歳

 あぁ、もうじき7回忌だね。

「自分が残されたら耐えられないから、絶対先に逝くよ」と勝手なことを私に言った翌日、私を残して先に空へ昇ってしまったあなた。夕方連絡を受けて慌てて帰宅する途中にすれ違った、あなたを乗せた救急車。隊員の方が心肺蘇生をしてくれる様子が見えた。

いいね、あなたはもういつまでも歳をとらなくて。一緒に老いていくはずだったのに私だけおばあちゃんになっていくよ。白髪も増えたし老眼もひどいし顔も手もしみだらけだし。ひどいね。

いつの間にかもう魚を買う時に泣かなくなったよ。あの頃はつい4切れ入りの魚の切り身のパックを手に取ってしまい、「あぁ、もう3切れでいいんだ」と気づきスーパーで涙がボロボロこぼれたり、「あなたの好きなぶどうパンはもう買わなくてもいいんだ」と菓子パン売り場で立ちすくんだり、虫がいても誰も追い出してくれなかったり……日常のちょっとしたことがつらくて切ない日々だったよ。私が持病の片頭痛で頭が痛くても誰も優しくポンポンしてくれないし誰もハグしてくれないよ。つらくてさみしくて消えたくなったよ。

それでもあなたのおかげで息子たちも元気だよ、頑張ってるよ。家族や親類、友人やいろいろな人が支えてくれたよ。あなたが一番ひどい親不孝をしてしまった両親も元気だよ。春には米寿のお祝いをしたよ。2人にはせめてこの先は幸せな人生を送ってほしいと思うよ。逝きたくて逝ったわけじゃないのはわかってるよ。「逝きたい」じゃなくて「生きたい」だったよね。出会えたことが奇跡のように24年経っても新婚のように仲良しだった私たち。いつも私を一番大切にしてくれたあなた。いつかまた会える日まで、私も頑張るよ。頑張った人しか行けないところにいるあなたに会うために。あなたが悔しがるぐらいに色んなことを楽しんでお土産話をいっぱい持って。

それまでにもうちょっとダイエットしておくからね。あなたに釣り合うよう若作りも必要かな? いつものように両手を広げて優しい笑顔で迎えに来てね。それまであともう少し頑張るからね。

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