お父さん、お元気ですか? お父さんが、亡くなって、二年が経ちます。
お父さんに感謝している事、沢山ありますが、一体何から伝えれば、良いのでしょうか?
私が十一才の時、亡くなった母の分まで、男手で一つで兄妹、私の三人を育ててくれた事。
東京の大学に、私を行かせてくれた事。
今から十年前。東京で就職して六年目。脳腫瘍の手術をした私。故郷から、六十才で、クタクタになりながら、何度も来てくれた事。
術後、私は会社を退職し、実家へ帰郷。車で、往復三時間かかる病院へ。検査に毎月、お父さんが連れていってくれた事。
病状が安定し、二度目の挑戦で受かった、看護学校。その入学式に、六十三才で、ヨレヨレのスーツを着て、来てくれた事。
大好きだよ、お父さん。
お酒が好きで、会社を定年退職してから、毎晩ベロンベロンになっていたね。
「どうせ飲むなら、『養命酒』飲みなさい」と言った私。次の日、お父さん、私を呼んで、
「お前の言った、『養命酒』の話。昨日、あの後、友人に話したら『面白い娘さんですね』って、笑っていたぞ」
嬉しそうに言って。私、この時、思ったよ。
「親孝行」って、何百万円あげるとか、良い仕事に就くとかではなくて、こういうささやかな一言で、充分幸せなんだな、って。
お父さん、息をひきとる時、誰を思いましたか? やっぱり、お母さん? 私達三人?私達は、お父さんがいるだけで、幸せでした。
今頃、お酒をお母さんについでもらって、相変わらずベロンベロンに酔っているのですか? そこでは、「養命酒」じゃなくて、本物のお酒でいいよ。ただ、私が行くまで、ちゃんと天国で、お母さんと生きててね。
じゃ、また会おうね! お父さん。